「新NISAはオルカン(全世界株式)一本で放置する、それだけ!」
ほとんどの人にとってこの投資法が正解です(トレーダーとして成功できる一握りの人を除いて)。しかし、実際にこの投資法を実行できている人は少ないのが現実です。
それはなぜでしょうか?
自分で銘柄を選べば「もっと儲けることができる」と思ったり、AI関係の株や金の価格が上がれば「乗り遅れたくない」と焦る。
そう考えてオルカン以外に手を出す。それぞれの取引では損益がプラスで利益を出していたのに、後から振り返ると、ずっとオルカンだけを持ち続けていた場合のほうが大きな利益だった・・・。
実は、このような「ついつい動いてしまう衝動」こそが、あなたの資産形成のじゃまをする最大の敵なのです。
この記事では、なぜ投資は放置して何もしないのが一番良のか、なぜその簡単なことが実は難しいのか、そしてどうすれば勝てるのかについて説明します。

私も、ついついいろんなものに手を出してしまいます・・・
なぜ投資は放置して何もしないのが一番よいのか?
投資信託でも株式でも同じですが、投資した後に売買を繰り返すと、投資して放置する場合よりも損をしてしまうことが多いです。その理由は4つあります。
手数料がかかる
株式の売買のたびにかかる手数料で、確実に資産が減ります。最近は手数料がずいぶん下がったため、この影響はそれほど大きくありません。
スプレッドがある
株式を売買する場合、通常はスプレッドが存在します。スプレッドとは、例えば売ることができる価格が100円でも買うことができる価格は101円といったように、売値と買値の間にある価格差のことです。売買するたびにスプレッドの分だけ損をします。
税金がかかる
税金の影響は実はかなり大きいです。
株式を持ち続けた場合は、元本と含み益の合計が次の運用の元本となり、複利の効果を100%活用して資産が増えます。
売買を繰り返した場合は、売却益から税金が惹かれるため、運用に回るはずだったお金が税金として消えて複利の効果が鈍ります。
恐怖と強欲の心理によってトレードに失敗する
トレーダーに向いている一握りの人以外は、売買のタイミングが悪い場合が多いです。
人気のある株を割高なタイミングで買って、株価が下がってきて人気がなく割安になったタイミングで株を売ってしまう。恐怖と強欲の心理にとらわれて、売買のタイミングが悪く損をしてしまいがちです。
なぜ放置するだけの投資法が難しいのか?
投資は放置して何もしないのが一番よい。これが頭ではわかっていても、なぜ私たちはほかのものに手を出して売買してしまうのでしょうか?そこには人間が生物として備えている3つの心の罠があります。
過剰な自信
多くの人は、自分は平均より賢いと勘違いしています。プロの運用者でさえインデックスに勝つのは困難なのに、「自分なら良い銘柄を選べる」「自分なら暴落前に逃げられる」という根拠のない自信によって、無駄な取引をしてしまいます。
乗り遅れることへの恐怖
「金を持っていたら大儲けできた」「あの個別株が2倍になった」という話を聞くと、脳は強烈なストレスを感じます。自分だけがチャンスを逃している(FOMO、Fear Of Missing Out)という焦りは、冷静な判断力を奪い、高値掴みの原因となります。

SNSを見てるとこんな話が多いから気になってしょうがない

心を乱されるなら、SNSは控えたほうがいいかも
退屈に耐えられない
インデックス投資の正解は、何もせず放置することですが、実際にやってみると非常に退屈です。人は娯楽や刺激を求めて、ついついほかのものに手を出してしまいます。
お金を増やすための投資と、娯楽や趣味の投資を混同してしまっているのです。

これはまさに自分に当てはまります・・・
どうすれば放置するだけの投資法を実践できるようになるのか?
投資はオルカン一本で個別株は一切禁止という厳しいルールは長続きしないもの。そう思う人に提案したいのが、コア・サテライト戦略です。
- コア(資産の約80%):オルカンやS&P500。コア部分はお金を増やすための投資。これは何があっても売りません(目標に達するまでは)。
- サテライト(資産の約20%):個別株、金、仮想通貨など。サテライト枠は娯楽や趣味の投資ができる場所です。
サテライト枠では自由に取引をしてよいので、メインのコア資産で売買したいという衝動を抑えることができます。
約20%の枠で自由に売買したり、話題の銘柄に挑戦したりすることで、知的好奇心を満たしつつ、資産の約80%は増やし続ける。これが長期投資を成功させる秘訣です。
コア・サテライト戦略で気を付けるべきこと
- コアを崩さない:例えばサテライト枠の比率を20%までと決めたら、個別株で損をしたからといって、コアの資産を売ってサテライト枠を補填してはいけません。サテライト枠が小さくなってしまったのは自分の責任。その小さな範囲で満足しましょう。
- 比率を固定する:逆にサテライト枠の投資が成功して30%になったとしたら、一部を売却してコア資産に振り替え、比率を維持するリバランスをします。
学術的にもトレードは富を損なうことは証明されている
投資の世界には、テレンス・オディーン教授らが2000年に発表した有名な論文があります。そのタイトルは、「Trading Is Hazardous to Your Wealth(トレードはあなたの富を損なう)」。
Trading Is Hazardous to Your Wealth:The Common Stock Investment Performance of Individual Investors
この論文は、1991年から1996年にかけて約6.6万世帯の投資データを分析し、残酷な真実を明らかにしました。トレードの頻度が高い人ほど、資産が増えにくいことがデータで証明されたのです。 市場平均に勝つつもりでトレードすればするほど、市場平均に勝てないどころか市場平均を年率6.5%も下回ったのです。
| 投資家グループ | 月間売買回転率 | 年率純リターン (Net Return) | 市場平均との差 |
| 市場全体の平均 | – | 17.9% | – |
| 第1グループ (最も取引が少ない) | 0.19% | 18.5% | +0.6% |
| 第2グループ | 1.15% | 16.8% | -1.1% |
| 第3グループ | 2.51% | 16.2% | -1.7% |
| 第4グループ | 4.90% | 15.4% | -2.5% |
| 第5グループ (最も取引が多い) | 21.49% | 11.4% | -6.5% |
この論文では、過剰な自信と取引コストが原因だと考察しています。
- 過剰な自信:投資家は自分の情報や能力を過信しており、自分なら勝てると考えて取引を行ってしまう。しかし、下がる直前に買って上がる直前に売るという、不利なタイミングで売買する傾向があります。
- 取引コスト:1回の手数料は小さく見えても、売買するほど資産額を押し下げる。
そして最後に、「投資家は、低コストのインデックスファンドなどを利用したバイ・アンド・ホールド戦略をとるべき」という投資家向けのメッセージを出しています。
まとめ
「証券会社の中で最も運用成績が良かったグループは、すでに亡くなっている人だった」という逸話があります。
ほとんどの人にとって、投資で成功するためには何も考えずに積立投資を続けること。
投資について勉強して個別株に手を出すとかえって資産が増えにくくなります。努力が報われるわけではない、これも投資の一面です。
- オルカンやS&P500への積み立て投資を続けることこそが、最強の投資法
- 自分は市場より賢くないと認めること
- どうしてもほかの取引をしたいなら、限定されたサテライト枠だけで楽しむ
あなたの資産を最も効率的に増やしてくれるのは、時間をかけて成長するコア部分の資産です。



