ここ数年、株式市場の主役であり続けた半導体銘柄。NVIDIAをはじめとするAI関連株の爆発的な上昇によって、資産を増やした投資家は多いのではないでしょうか。
しかし、2026年7月現在、市場では半導体株に対する不穏な空気が漂っています。半導体株はバブルで、ここからは暴落するだけではないかという懸念です。
日本株の中で時価総額1位になったキオクシアも、直近の高値から約4割下落しています。

おくりんの見立てでは、半導体株の急騰期間は終了しました。しかし、AI社会への移行というパラダイムシフトが終わったわけではありません。これからは、データセンターのボトルネックを解消する株が注目されるでしょう。
この記事では、半導体メーカーの最新の販売動向とデータセンター投資額の推移から、2026年後半以降の半導体株の将来性を予測します。
半導体は誰が何のために買っているのか?
まずは、現在の半導体メーカーがどこに製品を売り、どこで最もお金が動いているのか、基本構造を押さえておきましょう。
半導体の主要な販売先(エンドユーザー市場)は、大きく分けて以下の5つの分野に分類されます。
- コンピューティング(データセンター、サーバー、パソコンなど)
- 通信機器(スマートフォン、基地局など)
- 車載(自動車・EV、自動運転など)
- 産業機器(工場自動化、医療機器など)
- 民生用電子機器(テレビ、家電、ゲーム機など)
数年前までは、世界中で数十億台が普及しているスマートフォン向けの通信機器が金額ベースのトップでした。しかし今、最大かつ圧倒的なシェアを誇っているのがコンピューティング、特にAIデータセンター向けです。
金額ベースで市場を猛烈に牽引している製品は、主に以下の2つです。
- 最先端ロジック半導体(GPU・CPU): データの計算・処理を行う頭脳です。NVIDIAのH100や最新のB200に代表されるAIデータセンター向けGPUは、1個あたり数百万円という超高価格でありながら、世界中で争奪戦が繰り広げられました。
- 最先端メモリ半導体(DRAM・HBM): AIの高速処理には、データを一時記憶するメモリの性能がボトルネックになります。そのため、通常のDRAMよりもはるかに高速かつ高価格なHBM(高帯域幅メモリ)の需要が爆発しています。
つまり、現在の半導体メーカーの業績は、世界的なテック企業が、どれだけデータセンターに投資してくれるかにかかっていると言っても過言ではありません。
激変するデータセンター投資の伸び率
では、頼みの綱であるデータセンターへの投資は、今後どうなっていくのでしょうか?ここに、半導体株の未来を解く最大の鍵があります。
投資を行っている主な主役は、ハイパースケーラーと呼ばれる巨大IT企業(Amazon、Microsoft、Alphabet、Meta、Oracleの主要5社)です。ハイパースケーラーの設備投資額の推移を前年比の伸び率(YoY)とともに年ごとで区別してみると、興味深い事実が見えてきます。
主要5社のデータセンター設備投資額(合計)の推移です。2026年以降は予測値です。
| 2023年 | 約1,570億ドル | 生成AI(ChatGPTなど)が登場。 各社が手探りで投資を開始。 |
| 2024年 | 約2,560億ドル 前年比:+63% | AIの主導権を握るため、 なりふり構わぬNVIDIA製GPUの争奪戦が勃発。 |
| 2025年 | 約4,430億ドル 前年比:+73% | 狂気的な大投資の年。 手元資金だけでは足りず、各社が巨額の社債を発行。 |
| 2026年 | 約6,020億ドル 前年比:+36% | 投資の絶対額は過去最高を更新。 しかし、前年比の伸び率は36%へと減速。 |
| 2027年 | 約6,800億ドル 前年比:+13% | 伸び率はさらに落ち着き、10%台前半の安定成長に入る。 2024〜2025年に着工した巨大データセンターが次々と完成。 建設フェーズから運用・回収フェーズに移行する。 |
株式投資は変化率が重要なので、投資家としては投資額が増えているから問題ないと考えるのではなく、2026年から投資額の伸びが下がっていることに注目するべきです。つまり、半導体株の勢い(モメンタム)は明確に落ちてきています。
半導体株の将来性はどうなる?
おくりんは、半導体株の将来性について以下の2つのポイントを意識しています。
半導体株の急騰機関は終了する
株価は期待値の引き上げによって上昇します。2024〜2025年は、投資の伸び率が「+63%」「+73%」と、市場の予想を遥かに超えるスピードで加速したため、半導体株がガンガン上がりました。
しかし2026年以降、伸び率は「+36%」「+13%」と減速していきます。いくら投資の絶対額が巨額であっても、成長スピードが鈍化する株は上昇率も下がります。そのため、半導体株は横ばいあるいは下落が避けられないでしょう。
データセンターのボトルネックを解消する株が注目される
今後はAI社会へ突き進むことは変わりません。今後はデータセンターの弱点(ボトルネック)を解消できる技術を持つ企業に注目が集まるでしょう。
電力のボトルネック
AIデータセンターは莫大な電気を使用するため、データセンター拡大の最大のボトルネックは電力不足です。そのため、同じ計算をより少ない電力で行える最先端の製造技術を持つ企業(TSMCなど)の価値が上がります。
また、より直接的に電力を供給する企業の価値も上がります。小型モジュール原発(SMR)や再生可能エネルギー、送電網(グリッド)インフラを手掛ける企業です。
メモリのボトルネック
CPUやGPUの性能が上がっても、それらをつなぐメモリやパッケージング(複数のチップを1つにまとめる技術)が遅ければ、システム全体の性能が落ちます。メモリやパッケージングの分野で圧倒的なシェアや特許を持つ企業(SKハイニックス、マイクロン、およびそれを支える特定の製造装置メーカー)は、強力な価格決定権を持ち続けるため、業績の伸びが期待できます。
通信のボトルネック
AIの計算は、数万個のGPUを連動させて行います。GPUの処理速度と同様に、チップとチップを繋ぐ通信速度も重要です。
ブロードコムはデータセンター内のサーバー同士を繋ぐ高速通信用チップ(スイッチ・ルーター用半導体)で世界シェアのほとんどを握っています。また、GoogleやMetaがNVIDIAへの依存を減らすために独自開発しているカスタムAI半導体(ASIC)の製造受託でも独占的な強みを持っており、半導体銘柄の減速期においても別格の成長率を維持しています。
冷却のボトルネック
NVIDIAの最新アーキテクチャ(BlackwellやRubinなど)では、サーバー1ラックあたりの消費電力が100kW(一般家庭数十軒分)を超えています。これほどの熱量になると、従来のファンで風を送る空冷ではチップが焼き切れてしまうため、液冷技術への移行が必須となっています。
バーティブ・ホールディングス(VRT)は、データセンターの冷却システムおよび電源管理の世界的トップ企業です。2026年現在、受注残高が過去最高を更新し続けており、インフラ特需を最もストレートに利益に変えています。NVIDIAの公式パートナーであり、新型AIサーバーの設計段階から熱対策の共同開発を行っています。
モディーン・マニュファクチャリング(MOD)は、もとは自動車や産業用の熱交換器メーカーでしたが、自動車関連事業をスピンオフしてデータセンターの冷却ソリューションへビジネスに特化した企業へと生まれ変わる計画を進めています。データセンター部門の売上は前年比50〜70%増ペースで成長しています。
AI・半導体業界に投資する人向け書籍
AIや半導体について、あまりわかっていないまま投資していませんか?半導体と言っても範囲が広いです。生成AI関係企業と思っていたのに、違う半導体だった、ということにならないよう、基礎知識を身につけておいて損はありません。
「新・半導体産業のすべて」は、就職・転職希望者、半導体産業の関係者、投資家が一度は読むべき本です。半導体の全体像が理解できる本で、一番おすすめ。複雑な産業構造と関連企業を半導体の製造工程にそって網羅的に解説し、半導体関係企業200社以上が紹介されています。著者の菊地正典氏は元NECの半導体事業グループで主席技師長で開発・製造の第一人者。
「新・半導体工場のすべて」は、半導体業界を工場の切り口から解説することで、ヒト、モノ、カネ、情報も加えた総合的な形で半導体を理解できます。
「図解即戦力 半導体業界の製造工程とビジネスがこれ1 冊でしっかりわかる教科書」は、半導体業界および半導体製造装置業界への就職・転職希望者、そして投資家におすすめです。半導体業界および半導体製造装置業界について、半導体製造の仕組みや業界の働き方を解説した本です。
まとめ
これからの投資戦略についてまとめます。
- 半導体の最大の顧客はAIデータセンターであり、主役はロジック(GPU)とメモリ(HBM)
- データセンター投資は拡大し続けるが、前年比の伸び率は2025年をピークに鈍化して巡航速度へ移行
- 株価は将来の伸びの加速を好むため、半導体株全体が連れ高する時代は終わり、シビアな選別期へと変化
これからの半導体投資において、AIブームだからNVIDIAやETFを全力買いしておけば安心という思考停止は危険です。今後はデータセンターのボトルネックを解消する株が注目されるでしょう。
AI・半導体ブームの終わりを恐れる必要はありません。投資はさまざまなブームが発生しては消えていくことを繰り返すものです。
